まだ『箱の男』を読んでいない方は、 先にネタバレなし感想記事をご覧ください。
※この記事は『箱の男』のネタバレを含みます。
まだ読んでいない方は、先に作品を読むことをおすすめします。
『箱の男』を読み終えたあと、私はしばらく考え込んでしまいました。
怖かった。
気持ち悪かった。
でも、それだけでは終わらなかったのです。
この作品は、単なるサスペンスでも、ただのホラーでもありませんでした。
私が一番モヤモヤしたのは、誰が悪かったのかではありません。
この物語の中で、本当に人を愛していたのは誰だったのか。
そこが、最後まで分からなかったのです。
※まだ読んでいない方は先に作品を読むことをおすすめします。
『箱の男』は「愛される話」ではなかった
最初は、箱の中にいるお父さんの謎が気になって読み始めました。
なぜお父さんは箱の中にいるのか。
引きこもりなのか。
何か事情があって、お母さんが世話をしているのか。
そう思っていたのですが、読み進めるほど、その印象は変わっていきました。
この漫画のテーマは、たぶん「愛」だと思います。
でもそれは、誰かに愛されて幸せになる話ではありません。
登場人物たちが、それぞれ何を愛していたのか。
その愛は、本当に相手を見ていたのか。
それとも、自分の寂しさや執着を埋めるためのものだったのか。
そこを考え始めると、読後のモヤモヤがどんどん深くなっていきます。
お母さんの愛は本物だったのか
私は最初、お母さんを単純に責めることができませんでした。
もちろん、やっていることは普通ではありません。
誘拐。
監禁。
洗脳。
勝手に結婚届を書くこと。
現実なら許されないことばかりです。
それでも、お母さんが由美子を大切にしていたことも、完全には否定できませんでした。
ネグレクトされていた女の子を見つけ、自分の子どもとして育てる。
それは狂気でもあり、救いにも見えます。
ただ、ここが難しいところです。
お母さんは由美子を本当に愛していたのか。
それとも、亡くなった自分の子どもの代わりとして愛していたのか。
私は最後まで答えが出ませんでした。
お母さんは由美子を愛していたと思います。
でも、その愛は純粋な愛だけではなかった。
喪失感。
執着。
罪悪感。
母親であり続けたい気持ち。
そういうものが、全部混ざっていたように感じます。
だからこそ怖いのです。
愛していたから正しい、とは言えない。
でも、愛していなかったとも言い切れない。
この曖昧さが、『箱の男』の読後感を重くしているのだと思います。
お父さんは愛されていたのか
私が一番怖かったのは、箱そのものではありません。
最後に箱から出てきた、真っ黒になったお父さんでした。
あの姿を見た瞬間、ただ閉じ込められていた人というより、もう人としての尊厳を削られ続けた存在に見えました。
お父さんは、お母さんによって箱に閉じ込められます。
しかも、ただ閉じ込めるだけではありません。
恐怖を与え、世話をし、優しい言葉をかけ、必要とする。
いわゆる飴と鞭のような形で、お父さんの価値観は少しずつ書き換えられていきます。
お母さんが洗脳の本を買い、その通りにしていた描写もあります。
そう考えると、お父さんは「自分から箱に入った」のではなく、そう思い込むように調教されてしまったのではないかと感じました。
最後にお父さんがお母さんをかばったのも、愛だったのか、依存だったのか、もう分かりません。
お母さんにとって、お父さんは夫だったのでしょうか。
それとも、由美子を育てるために必要な“箱の中の父親”だったのでしょうか。
私は、お父さんこそ一番愛されなかった人だったのかもしれないと思いました。
お母さんは世話をした。
でも、お父さん自身を見ていたわけではない。
必要とされていたけれど、愛されていたとは言い切れない。
その残酷さが、あの真っ黒な姿に表れていたように感じます。
元旦那が愛していたのは、家族ではなく箱だったのかもしれない
読み終わったあと、ずっと気になっていた場面があります。
元旦那が最後に笑っていた場面です。
彼にはすでに新しい家族がいます。
それなのに、箱の売れ行きを見て、気味の悪い笑顔を浮かべていました。
あの笑顔をどう受け取ればいいのか、私はしばらく考えてしまいました。
私には、元旦那は家族よりも箱を見ているように見えました。
元妻がどうなったか。
由美子がどう生きたか。
箱に閉じ込められたお父さんがどうなったか。
そういうことよりも、彼にとって大事だったのは「自分の箱が注目されたこと」だったのかもしれません。
そう考えると、とても気持ち悪い。
でも同時に、すごく納得もしてしまいました。
この作品の中で、元旦那だけは最初から最後までブレていないのかもしれません。
彼が愛していたのは、お母さんではなく、箱。
家族ではなく、自分の作ったもの。
そう思うと、お母さんは最初から愛されていなかったのかもしれない、と感じました。
お母さんは由美子を見ながら、亡くなった子どもを見ていた。
元旦那は家族を見ながら、箱を見ていた。
誰も、目の前の相手そのものを見ていなかったのかもしれません。
お父さんと元旦那の対比が残酷だった
元旦那と、箱に閉じ込められたお父さん。
この二人の対比も、かなり残酷だと思いました。
元旦那は箱を作る側です。
そして最後まで、自分の箱に価値を見出しているように見えます。
一方で、お父さんは箱に入れられる側です。
最初は一人の人間だったはずなのに、最後には真っ黒な姿で箱から出てくる。
元旦那は箱を愛した。
でも、お父さんは箱になってしまった。
この対比が、ものすごく怖いのです。
元旦那には自我がある。
欲望もある。
新しい家族もある。
でも、箱の中のお父さんには、最後に何が残ったのでしょうか。
誰からも本当の意味で愛されず、都合よく必要とされ、最後には一人取り残される。
そう考えると、この作品で一番救われなかったのはお父さんだったのかもしれません。
祖母は娘を愛していたのか
お母さんを通報したのは、お母さん自身の母親でした。
ここも、かなり苦しくなる部分です。
本来なら、母親は娘にとって愛されるべき存在だったはずです。
でも作中の祖母は、お金をせびり、娘を利用し、最後には通報します。
しかも、娘が捕まればお金が入ると思っていたようにも見える。
その浅はかさが、妙に現実的で怖いと思いました。
祖母は娘を愛していたのでしょうか。
それとも、娘をただ都合のいい存在として見ていたのでしょうか。
お母さんが壊れていった背景には、この母親との関係もあったのかもしれません。
愛してほしかった人から愛されなかった。
だからこそ、お母さんは自分だけの家族を作ろうとしたのかもしれません。
そう考えると、この物語は一つの事件ではなく、壊れた愛情の連鎖にも見えてきます。
さっちゃんの存在も悲しかった
さっちゃんもまた、忘れられない存在です。
最初は友達のように見えました。
でも、読み返すほど、その関係は単純ではなかったのだと感じます。
さっちゃんは由美子を自分より下に見て、安心したかったのかもしれません。
友達として近づいたというより、自分の心を保つために由美子を必要としていたようにも見えました。
さっちゃんの過去や家族の描写を考えると、彼女もまた愛され方を知らなかった子どもだったのかもしれません。
誰かを大切にしたい。
でも、自分の不安を埋めるために相手を利用してしまう。
そういう弱さが、さっちゃんにもあったように思います。
この作品では、誰かを愛しているように見える行動が、同時に相手を傷つける行動にもなっています。
だから読後に、すっきりした答えが残らないのだと思います。
由美子は幸せだったのか
ここまで考えて、最後に戻ってくるのがこの問いです。
由美子は幸せだったのでしょうか。
それとも不幸だったのでしょうか。
普通に考えれば、由美子の人生は異常です。
本当の親から離され、作られた家族の中で育ちます。
お父さんは箱の中にいて、お母さんも普通ではありません。
でも、そこに愛情がまったくなかったとも思えません。
由美子は確かに、お母さんから愛されて育ったようにも見えます。
ただ、その愛が本当に由美子自身へ向けられたものだったのか。
亡くなった子どもの代わりではなかったのか。
お母さん自身の空白を埋めるためではなかったのか。
そこを考えると、簡単に「幸せだった」とも「不幸だった」とも言えなくなります。
私は今でも、由美子が幸せだったのか分かりません。
でも、その答えが出ないことこそ、この作品の余韻なのだと思います。
この作品の中で、本当に人を愛していたのは誰だったのか
『箱の男』を読み終えたあと、私はずっと考えていました。
この作品の中で、本当に人を愛していたのは誰だったのか。
お母さんは由美子を愛していた。
でも、その中には亡くなった子どもへの執着もあった。
お父さんはお母さんをかばった。
でも、それは愛だったのか、洗脳だったのか分からない。
元旦那は箱を愛していた。
祖母は娘よりお金を見ていたように見える。
さっちゃんも、由美子を友達として見ていたのか、自分の安心材料として見ていたのか分からない。
みんな何かを愛している。
でも、その愛は本当に相手を見ていたのか。
そこが分からないから、こんなにもモヤモヤが残るのだと思います。
ここまで読んで、 もう一度読み返したくなった方は こちらから読めます。
まとめ|『箱の男』は愛と執着の境界線を描いた漫画だった
『箱の男』は、真相が分かって終わる漫画ではありませんでした。
むしろ、分かったあとから考え続けてしまう作品です。
私はお母さんを完全には責められません。
でも、正しかったとも思えません。
お父さんは可哀想でした。
でも、最後にお母さんをかばった気持ちが愛だったのか、依存だったのかも分かりません。
元旦那の笑顔は不気味でした。
でも、彼が箱を愛していたと考えると妙に納得してしまいます。
そして由美子が幸せだったのかどうかも、今でも答えが出ません。
この漫画は「愛される物語」ではなく、「人は何を愛していたのか」を問い続ける物語だったのかもしれません。
愛と執着。
救いと支配。
家族と監禁。
その境界線が分からなくなるから、『箱の男』はこんなにも気持ち悪く、忘れられない作品なのだと思います。
あなたは、誰の愛が一番怖かったですか。
そして由美子は、幸せだったと思いますか。
私はまだ、答えを出せずにいます。
あなたはどう思いましたか?
私は最後まで、 由美子が幸せだったのか答えを出せませんでした。
あなたは、 誰の愛が一番怖かったですか?
コメントで教えてください。
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